ステマ規制による措置命令第1号はGoogleマップのクチコミ
消費者庁は、令和6年6月6日とある医療法人(ここでは以下「A医療法人」とします)に対して、同法人が運営するクリニックにおいて供給する診療サービスに係る表示について、景品表示法に違反する行為が認められたとして措置命令を行いました。
ここでいう景品表示法とは「ステルスマーケティング告示」のことを指します。つまり令和5年10月から施行されたステマ規制で初めて措置命令がA医療法人に対して行われたということです。
ステマ規制とは
ステマ規制は、企業や個人が商品やサービスを宣伝する際に、広告であることを隠して宣伝する行為を防ぐための法律です。
たとえば、インターネット上で誰かが「この商品はすごくいいよ!」と書いているとき、それが実は企業からお金をもらって書かれたものである場合、消費者はその情報を信じてしまうかもしれません。ステマ規制は、こうした隠れた広告を防ぎ、広告であることをきちんと明記することが求められています。
このステマ規制によって、企業や広告主は広告であることをはっきりと表示しなければならず、消費者はより信頼できる情報を得ることができるようになる、というのがこの法律の主旨です。
どのようなステマだったのか
では、このA医療法人の運営するクリニックではどのようなステマが行われていたのかということですが、このステマの舞台はGoogleマップのクチコミでした。
消費者庁のホームページからの情報では、インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した患者に対し、Googleマップ内の口コミ投稿欄のクリニックの評価として「★★★★★」(星5)又は「★★★★」(星4)の投稿をすることを条件にインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたことによってたくさんの高評価の口コミを得たということです。
このような何らかの見返りを条件に高い評価の口コミを依頼することは、Googleマップの規約においても禁止されています。
虚偽のコンテンツ、偽装行為
レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。
Googleマップではこういった規約に違反をした場合は、コンテンツの削除などのペナルティが課せられます。
どのような経緯で消費者庁が措置命令を出すに至ったのかはわかりませんが、このケースではGoogleがペナルティを課す前に消費者庁から措置命令が出されました。
一部の情報によると、このクリニックは高評価の口コミを投稿する見返りとして、インフルエンザワクチンの接種費用を550円安くしたようですが、少額であっても規制の対象になるということをマーケティングに携わるものとしては肝に銘じておくべきです。
実際どれだけ悪質なの?
消費者庁が措置命令を出すくらいだから、余程のことなのかなとは思いましたが、その現場がGoogleマップということなので、どんなものか見てみましたがこれがかなりひどいです。
ここでは具体的にどこのクリニックだとか名称を記載することは避けますが、これだけ情報が出てるので探せばすぐにわかることでしょう。興味のある方はご自身で検索等をしてみて下さい。
まず、基本的にこちらのクリニックは平時からかなり評判が悪いようで、私が見た時点でGoogleマップのクチコミの平均は2.0でした。
それもクチコミの総数が300件ほどあるので、かなり口コミを集めているほうです。その平均が2.0ということですから、推して知るべしではないでしょうか。
ここ最近の口コミを見てみると下のように星1がずらっと並んでいます。
ところが令和5年12月頃の口コミを見てみると見事なまでに星5のクチコミばかりが並んでます。12月といえばインフルエンザが流行りだす頃ですから、多くの人がワクチンの接種でこのクリニックに訪れ、そこで不正が行われたのでしょう。
同じクリニックでここまで評価が極端に分かれることは不自然すぎなので、何らかの不正な手段が行われたであろうことはバレバレです。
どうせやるなら、もうちょっとうまくやろうとか思わなかったのかとも思ってしまいます。(もちろん私はうまくステマをやってやろうとは思いませんが。。)
措置命令に対応できるのか
このクリニックは消費者庁から措置命令が出されたということですから、その命令に従って何らかの手続きをしなければならないのですが、これは厄介なことではないのかなと思います。
消費者庁のホームページでは、これらのクチコミの「表示をしている行為を速やかに取りやめる」こと、再発防止策を取ることなどがこのクリニックに対して求められています。
Googleマップのクチコミには時折根も歯もない悪評を書き込まれることがありますが、Googleに削除申請をしても基本的には削除はしてもらえません。
根拠のない低評価のクチコミでさえ、そう簡単には削除してもらえないのに、良い評価を45件(消費者庁の発表)も一度に削除なんてできるのか疑問に思います。
まあこの件については今後どうなるのか見守っていきたいと思いますが、安易な手段に走って良い評価を得るよりも、顧客に良いサービスを提供して喜んでもらうことを考えることが王道であることが学べた事件でした。